今回の手網コーヒー豆焙煎は「半熱風式」です。
手網をアルミホイルで包み、豆に直接火を当てずにこもった熱で煎る手網焙煎です。
今回使う手網は、下記の記事内で材料費330円で作成したものです。
また、下記のような市販品でも、この記事と同じように焙煎できますよ。
準備
手網をアルミホイルで包む
手網を構成する上下それぞれのザルを、外側からアルミホイルで包みます。
ザルとザルの継ぎ目から熱が多少逃げますが、加熱された豆から出た水蒸気と煙を逃がすための隙間はどのみち必要なので、これは気にしないでください。
むしろ、もし焙煎豆が渋かったり酸味が強すぎたりしたなら水蒸気がこもり過ぎ、もし煙臭くなってしまったなら煙がこもり過ぎです。
場合によっては、アルミホイルの手網上部を覆う部分にカッターなどで小さな(大きいと熱が逃げ過ぎるため要注意)穴を開けて、水蒸気と煙を逃がすように工夫します。
私は一辺3cmくらいの正方形状に穴を開けることが多いです。
ただ、人により火力や焙煎するコーヒー豆の量が違うでしょうし、豆が含有する水分量などによっても穴の適切な大きさは違ってくるはずですから、自分が焙煎している環境で適切な穴の大きさを探ってみるのが良いと思います。
なお、閉じた状態の手網を丸ごと1枚のアルミホイルで覆わないのは、煎り止め(焙煎を終えること)の際に素早く手網を開いて焙煎豆を取り出したいからです。
予備知識
予備知識、特に「1ハゼ」「2ハゼ」「チャフ」の知識がないと焙煎できません。
これらの予備知識は下記の記事に書きました。ご参考までに。
焙煎
アルミホイルで包んだ手網に生豆を入れ、カセットコンロの火の上で振ります。
かなり熱いので軍手を忘れないでください。
下図に、直火式手網焙煎と比較する形で、半熱風式手網焙煎の火加減を示します。
直火式は、直火と言いつつも豆や手網は直接は火で炙らず、立ち上る熱気・熱風に当てます。
一方、半熱風式では手網をアルミホイルに包んでいるため、手網(を包むアルミホイル)を火で炙るくらいの高火力でなければ豆に十分な熱を伝えられません。
多めの豆(≧100g)を焙煎する場合、半熱風式では下図くらいしっかり火に当てつつ、手網を振ることもあります。
手網は常に振り続けるためアルミホイルの火が当たる箇所は常に変わりますが、それでもこれほどの高火力(火に近いどころか当てる)だとアルミホイルに穴が開いてしまう可能性があります。
手網を前後に振りつつ、右に傾けてアルミホイルの右側を炙り、次は左に傾けて……を繰り返すなど、ただ手網を振るだけでなく、火が当たる箇所を分散させる工夫も必要です。
下記の流れを目標に焙煎します。
以前の記事で紹介した直火式手網焙煎との差異は、チャフが剥離する時間だけです。
直火式手網焙煎は、まず豆表面に大きな熱が伝わるため、早い段階でチャフが焼かれて剥離し始めます。
半熱風式手網焙煎は、アルミホイル内にこもった高温の空気から豆に時間をかけて熱が伝わり、膨張/収縮する豆から乾燥したチャフが剥離します。
そのため、直火式と半熱風式で同じ時間に1ハゼが起こったとしても、その前のチャフの剥離は半熱風式手網焙煎の方が遅く(開始から4~6分で)始まります。
チャフの剥離は4分間ほど続き、(ほぼ)全てのチャフが剥離する頃には1ハゼが始まります。
煎りムラが少なければ1ハゼは2分間程度で終わります。
長すぎた場合には煎りムラが疑われますので、攪拌の頻度を上げるなど対策してください。
通常は1ハゼが落ち着いてから更に1分程度焙煎を進めると2ハゼが始まります。
1ハゼ終了と2ハゼ開始が重なってしまうこともあります。
ハゼと焙煎度の関係はおおむね下記のとおりです。
- 浅煎り:1ハゼ半ば~1ハゼ終了
- 中煎り:1ハゼ直後~2ハゼ開始
- 深煎り:2ハゼ開始直後~2ハゼ半ば(これを超えると苦過ぎ)
狙った焙煎度で底が平らな(豆が重なり難い)ザルに焙煎豆を移し、うちわで仰いで冷まします。
サーキュレーターや冷風機能の付いたドライヤーを使用するとより効率的に冷ますことができておすすめです(ただしチャフがものすごく舞い上がります)。
焙煎の参考に
焙煎機
プロ用の焙煎機には、豆を入れる筒と熱源の位置関係や筒の穴の位置が違う3種類の方式があります。
- 直火式(左):豆にダイレクトに熱が伝わり、味わいの輪郭がくっきり。しかし、煎りムラが生じやすい
- 熱風式(中):筒の中の温度が一定なため煎りムラが生じ難い。しかし、直火式より豆に熱を伝え難く、あっさりとした味わいになりやすい
- 半熱風式(右):直火式と熱風式の中間の特徴を持つ
直火式手網焙煎
通常の手網焙煎は、直火式焙煎機に近い焙煎方式です。
直接大きな熱を豆に伝えるため、コーヒーの風味を作るメイラード反応やカラメル化を始めとした化学反応が起こりやすく、味わいの輪郭がくっきりします。
一方で、煎りムラが生じやすいのが難点です。
また、あまりに強く加熱すると豆の組織の損傷が激しくなってしまいます。
損傷部位から焙煎後早々に味・香り成分が揮発し、「焙煎直後は美味しかったのに、数日後に飲んだら味気ない」なんてことになってしまうリスクもあります。
半熱風式手網焙煎
本記事、手網コーヒー豆焙煎③[半熱風式(アルミホイル包み)]では、半熱風式焙煎機に近い手網焙煎を目指しています。
アルミホイルに包まれている分、煎りムラが生じ難く、また味・香り成分の揮発を早めるほど過度に豆の組織を損傷してしまうリスクは低いです。
一方で、半熱風式「焙煎機」ならばいざ知らず、半熱風式「手網」焙煎の場合、意識して火力を上げなければ豆に十分な熱が伝わりません。
その場合、風味を作るメイラード反応やカラメル化を始めとした化学反応が十分に生じず、味気ないコーヒーになるリスクがあります。
手網焙煎方式ごとのコツ
まとめると、直火式手網焙煎には豆の組織の損傷が激しくなりやすいという短所が、半熱風式手網焙煎には意識して火力を上げなければ豆に十分な熱が伝わらないという短所が、それぞれあります。
よって、各方式の短所が出ないよう、下記のように意識することが成功に繋がるといえます。
- 直火式手網焙煎:「加熱し過ぎない」を意識
- 半熱風式手網焙煎:「積極的に加熱する」を意識
ただし、直火式手網焙煎では「加熱し過ぎない」を意識し過ぎた結果、焙煎時間が長時間になって香り成分などが揮発し過ぎるリスクもあります。
個人的には、手網をアルミホイルで包んだ半熱風式手網焙煎で、10分以内に1ハゼが始まるように「積極的に加熱する」焙煎豆が、手網焙煎コーヒーの中で1番美味しいと思っています。
手網焙煎方式による香り成分の揮発の差異
嗅覚は揮発した物質を感覚・知覚するものです。
よって、香り成分は揮発しやすい、というか揮発しないと香らないはずです。
さて、各手網焙煎方式の香り成分の揮発を想像してみましょう。
- 直火式手網焙煎:豆から出た香り成分はすぐさま飛散
- 半熱風式手網焙煎:アルミホイルである程度香り成分の飛散を防げる?
つまり、手網焙煎方式により豆の周囲の香り成分の濃度に違いが出る可能性があり、この濃度がそれ以上の香り成分の揮発量に影響する可能性を感じています。
私は本記事で紹介した半熱風式手網焙煎に、香り成分が揮発し難くなる効果を期待しています。
ただし、煙もこもりやすく豆が燻されて煙臭くなる可能性もありますので、アルミホイルに穴を開ける場合にはその大きさに少々気を遣います。
生豆の購入について
生豆を購入できるお店は1kg単位で販売している場合が多いのですが、これから手網焙煎を始めようと考えている方にとっては少々多く感じるのではないでしょうか。
最初は下記くらいの量が良いと思います。
最近はアウトドアブランドLOGOSでも生豆を扱っています。
100g入りです。少なすぎず多すぎず、絶妙な量ですね。
また、私が焙煎を始めた頃に初めて生豆を購入したのが下記リンクのお店です。
このお店でも少量の生豆が購入できます。
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