厚手のカップで飲む深煎りコーヒーは美味しい。
そう、確かに美味しいのですが……それはなぜなのでしょう?
ここで考察してみようと思います。
カップと味・焙煎度
カップの厚み・形状と感じる味わい、そして向いている焙煎度は、下記のように要約できます。
- 薄手、縁が反ったカップ:酸味が際立つ。浅煎り向き。
- 厚手、縁がまっすぐなカップ:苦味が円やかに。深煎り向き。
今回のテーマは、これがなぜなのか、です。
「味覚地図」は間違い
「味覚地図」という言葉は有名です(でした)。
舌の奥で苦味を感じる、など、舌の部位により感じる味が違うという考えですね。
しかし、「味覚地図」は、実は間違っていた、というのもまた有名な話です。
甘味、苦味、酸味、塩味、旨味……いわゆる五味を、舌のどの部分でも感じるという考え方が、今は一般的なようですね。
仮に味覚地図が正しいとすれば「厚手で、しかも縁がまっすぐなカップで、コーヒーを舌の奥まで一気に流し込んだ方が苦味を味わいやすいのだ」などと結論するのでしょうが、味覚地図が間違っているとなると……
でも厚手のカップで深煎りを飲むと確かに美味しいのですよ。なぜ???
「口内での広がり方」と「舌の部位による温覚の差」が原因?
「味覚地図」は間違い。これはわかりました。
とはいえ、火の無い所に煙は立たぬ、とも言います。
なにか原因があるはずです。
注目したのは「口内での広がり方」と「舌の部位による温覚の差」です。
口内での広がり方
本来はコーヒーの話ですが、ビールを例にとって考えましょう。
薄手のグラスで飲むと、口内全体にビールが広がって味わいをシャープに感じますが、のど越しという点ではジョッキに一歩劣ります。
厚手のジョッキで飲むと、口の奥にビールが流れ込んでのど越しを楽しめますが、一方で繊細な味わいを楽しむ点ではグラスに一歩劣るでしょう。
これはコーヒーでも言えることだと思います。
薄手で、縁が反ったカップでは、コーヒーは口内に広がりやすいはずです。
舌の広い範囲で味わうことで、味わいをシャープに感じることができそうです。
浅煎りコーヒーは、薄手の縁が反ったカップで、クリーンでフルーティーな酸味を最大限に味わいたいです。
一方、厚手で、縁がまっすぐなカップでは、コーヒーは口内で比較的広がり難いはずです。
舌の狭い範囲で味わうことで、シャープというよりは、どちらかと言えば円やかな質感になるでしょう。
深煎りコーヒーは、「苦味」という本来ネガティブな味が強くなりがちですから、厚手の縁がまっすぐなカップで、質感を円やかにした方が飲みやすくなります。
舌の部位による温覚の差
舌については、つい「味覚」にばかり目が行ってしまいますが、ここでは「温覚」にも注目しました。
「猫舌」の人とそうでない人は何が違うのか、聞いたことはありますか?
普通に考えると「舌の温覚の鋭さ」と考えそうですが、実は食べ方、より具体的には舌の使い方が違うのだそうです。
舌の先端は、奥と比べて、温覚が鋭敏です。
猫舌の人は舌の先端で飲み物(食べ物)を迎えてしまうから熱く感じ、猫舌でない人は舌の先端に飲み物(食べ物)が触れないように飲む(食べる)からさほど熱く感じないのだとか。
この情報を得て、私はピンと来ました。
コーヒーの味の感じ方の差は、舌の部位による温覚の鋭さの違いが原因なのではないでしょうか?
深煎りコーヒーを飲むとき、飲み始めは鋭い苦味をキツく感じても、冷めてしまった最後の一口は苦味が気にならず滑らかに感じる、というのはよく経験することです。
これは実際にコーヒーの温度が変わった場合の話ですが、たとえコーヒーの温度が一緒だとしても、舌の部位による温覚の鋭敏さの差により、違った味に感じる可能性は十分にあると思います。
つまり、鋭敏な舌の先端で触れると熱く感じるために苦味をシャープに感じ、鈍感な舌の奥の部分で触れれば少し冷めたように感じるために滑らかに感じるのではないか、私はそう考えています。
冷めてから飲むと、厚手のカップでも薄手のカップでも、温かいときほどの味の違いを感じないような気がする……といった経験からこのような発想に至りました。
最後に
最後まで読んで頂いて、ありがとうございます。
カップの厚み・形状と感じる味わい、そして向いている焙煎度を、もう1度まとめましょう。
- 薄手、縁が反ったカップ:酸味が際立つ。浅煎り向き。
- 厚手、縁がまっすぐなカップ:苦味が円やかに。深煎り向き。
以前はよく聞いた「味覚地図」は間違い。
でもカップによる味の違いがあるような気がして……その理由を今回考察してみました。
現状考えているその要因が「口内での広がり方」と「舌の部位による温覚の差」です。
特に「温覚」が影響しているのではないかというのは私の勝手な考えです (^^;)
今後も、新しい発想を得た場合には更新していきますね。
コメント