「1番美味しいコーヒーの淹れ方」という評価も根強いネル(布)ドリップ。
様々なメーカーがネルフィルターを販売しており、それぞれ実に個性的で面白いのです。
今回はマルタ(Maluta)のネルフィルターを使ってみました。
ネルフィルターとは
まずはネルフィルター全般の説明から。
ネルフィルターの「ネル」とはフランネル(Flannel)の略称で、片面もしくは両面が起毛した厚手の織物のことです。
羊毛製のものと木綿製のものがあり、前者が主にスーツの生地として使われるのに対し、後者はネルシャツ(下記写真のお姉さんが着ているような厚手のシャツ)の生地や、出汁用の濾し布、そしてコーヒーフィルターとして使われます。
ネルフィルターは2~4枚の生地を縫い合わせて作られます(5枚以上のものは、あるのかもしれませんが、私は見たことがありません)。
意味合いわかるでしょうか。下の写真は①~④の4枚の縫い合わせたネルフィルターのものです。
2枚はぎのネルフィルターは色々な形状をしていて、台形に近い形の少々珍しいものもありますが、裁断に工夫を凝らして円錐形に近付けているものもあります。
3枚はぎ以上のネルフィルターは、(少々膨らんでいますが)円錐形に近いことが多いです。
なお、この「〇枚はぎ」という表現ですが「〇枚の生地を接ぎ合わせた」という意味です。
「はぎ」は「つぎはぎ(継ぎ接ぎ)」の「はぎ(接ぎ)」ですね。
各社のネルフィルターから自分のお気に入りを探すとき、この「〇枚はぎ」という点に注目する人は多いです。
ただ、「〇枚はぎが1番優れている」とは言えないというのが、個人的に受けている印象です。
好みで選んで良いのですが、ペーパードリップの際に円錐形を使用している方は3枚はぎ以上を選ぶと違和感なく使い易いと思います。
あとは、厚みと、片面起毛か両面起毛か、どの程度目が詰まっているかといったところに注目しながら、お気に入りを探します。
厚みがあり、内側(コーヒー粉が触れる面)が起毛していて、生地の目が詰まっている方が、保水力が高く濃いめのコーヒーがはいります。
マルタのネルフィルター
ここからは「マルタの」ネルフィルターについて、です。
マルタやMalutaとも表記されますが「丸太衣料」というメーカーです。
非常に希少なネルドリップ関連品に特化したメーカーです。
今回は下記リンクのタイプを試します。
僅か数百円の製品だからと侮る事勿れ。
メーカーの凄まじいこだわりを感じるネルフィルターです。
4枚はぎ
正直に言うと予備知識が無いまま買ったのですが、4枚はぎなのですね。
両面起毛
両面起毛のようです。
下写真の上半分も下半分も起毛しているようのがわかるでしょうか。
綿ポリ混紡
コシがあるなと思ったら、綿にポリエステルを混紡しているようです。
繰り返し使ったときに、へたらずに使えるのかもしれません。
もしへたると目詰まりするかもしれませんが、それが無ければ安定して何度も使えますね。
これから長く使って確かめましょう。
厚手
しっかりとした厚みがあります。
保水力があって、濃度のあるコーヒーを淹れられそうですね。
もし薄手のネルフィルターを使ってペーパードリップとさほど変わらない味と思ったなら、マルタくらい厚手のネルフィルターを試してみることをおすすめします。
下準備
糊落とし
新品のネルフィルターを初めて使うときは糊を落とします。
コーヒー粉の出がらしを入れたお湯で20分程度煮ます。
とはいえ、あまり時間には神経質にならず、20分「くらい」煮れば良いです。糊が残っていれば追加で煮ても良い訳ですし。
その後、水でよくすすいで、しっかり絞ります。
2回目以降の使用では、既に糊が落ちている訳ですから基本的に煮沸しません(ただし、汚れが目立ってきたら再び煮沸します)。
冷蔵庫や冷凍庫から出したネルフィルターを水ですすぎ、しっかり絞ります。
その後の選択肢は下記のような感じでしょうか。
- 金具(ハンドル)を通したネルフィルターを手で持つ
- 1と同じものをヤグラやドリップスタンドに乗せる
- 金具(ハンドル)無しでヤグラやドリップスタンドに被せる
- 金具(ハンドル)無しでサーバーなどに被せる
今回は3の方式で行きましょう。
もっとネルフィルターが大きければ、昔ながらの喫茶店で見るやり方ですね。
なお、もししっかり固定したければクリップでネルフィルターをヤグラに止めると良いと思います(今回私はやっていません)。
ネルフィルターには裏表があります(どちら側を表と呼ぶのかは存じませんが)。
ネルフィルターによっては片面起毛のものもあり、その場合は起毛面とそうでない面のどちらを内向きにするかで向きを決めます……が、今回のネルフィルターは両面起毛です。
どちら向きでも起毛面が内向きになるなら、縫い目は外に向けた方がドリップ時の水流を妨げず洗いやすいです点で無難と言えるでしょう。
つまり、下記の写真でいう左の状態で使います。
下に置くサーバーやカップは事前にお湯で温めておきます(もちろんドリップ前にお湯は捨てます)。
ペーパードリップする際にサーバーを温めないという方も、ネルドリップの際には温めることをおすすめします。
というのも、ネルフィルターはたとえしっかり絞っても湿っており、また後述しますが時間をかけてドリップすることも多いため、コーヒーが冷めやすいのです。
ドリップ
さて、ネルドリップコーヒーを淹れましょう。
コーヒーの粉をセットして、ドリップしていきます。
注意するのは「ゆっくり淹れる」というただ1点です。
ネルフィルターは柔らかく、硬いドリッパーを使うときほどコーヒー粉が踊りません。
それでもしっかりとした濃度で淹れようとすれば、厚いコーヒー粉の層にゆっくりお湯を通す必要があります。
だからゆっくり淹れる訳ですね。
ペーパードリップは3分以内に淹れるという人が多いのではと思いますが、ネルドリップはもっと時間をかけるのもやむ無しかと思います。
さて、このマルタのネルフィルターで淹れた感触ですが、一言で言えば大変良いです。
お湯をしっかり保持して、しかし滞留し過ぎない絶妙なバランスです。
綿ポリ混紡の生地も、コシがあって扱いやすい印象を受けました。長く使えそうです。
飲んでみよう
香りからしてもうペーパードリップとは違います。
香りの濃度が濃い、と表現すれば良いでしょうか。
ネルドリップ特有の香りです。期待が高まりますね。
口に含むと、滑らかで濃厚、「蜜」のようなトロッとした質感を感じます (*´ω`)
これぞネルドリップコーヒー。素晴らしい美味しさです。
保管
使い終わったネルフィルターは水洗いした後、ジップロックなどの袋に入れて冷凍庫で保管すると最低限の手間で済みます。
ネルドリップのデメリットとして「手入れ、保管が面倒」とよく言われますが、冷凍庫保管であればさほど手間はかかりません。
アウトドアでも
アウトドアでもネルフィルターを使って極上のコーヒーを楽しめます。
冷凍庫で凍らせたネルフィルターを保冷剤と一緒にクーラーボックスに入れていくのもありですが、下写真のように水に浸して持っていくこともできます。
上写真の容器は無印良品の小型弁当箱で、下記の記事でも紹介しています。
同メーカー他製品のおすすめ
マルタのネルドリップ関連品のラインナップは非常に充実しており、今回の記事で使ってみたネルフィルター以外にも色々な製品があります。
例えば、円錐ドリッパーにペーパーフィルターの代わりに乗せて使うネルフィルターも販売されています。
普段ペーパードリップをしている方ならすぐに取り入れられますね。
しかも焙煎度により使い分けられるラインナップです。
円錐ネル 中~深煎りコーヒー豆専用
「中~深煎りコーヒー豆専用」がこのシリーズの中では最も標準的で、広い用途に使い易い製品だと思います。
円錐ネル 深煎りコーヒー豆専用(素早く抽出)
「深煎りコーヒー豆専用」は濾過速度が速いのが特徴です。
深煎りの過度な苦渋味を出さないようにという配慮なのでしょう。
円錐ネル アイスコーヒー専用(ゆっくり抽出)
「アイスコーヒー専用」は「深煎りコーヒー豆専用」とは逆に濾過速度が遅いのが特徴。
しっかり濃く抽出して、キリっとしたアイスコーヒーを淹れるためでしょうね。
台形ネル
台形ドリッパー用のネルフィルターもあります。
最後に
最後まで読んで頂いてありがとうございました。
マルタのネルフィルターでコーヒーを淹れてみました。
美味しかった (*´ω`)
今後も長く使って、今のお湯抜けを保てるか見ていこうと思います。
長く使ってコーヒーの成分が馴染んでからの方が美味しく淹れられる、ということも多いですしね。
ネルフィルターはジーンズや革製品のように、使って育てるものなのです。
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