カセットコンロ国内最大手『イワタニ』の、カセットこんろ用手回し焙煎機MY ROAST。
老舗プロ向け焙煎機メーカー『フジローヤル』が設計・監修しています。
クラウドファンディングでプロジェクトが開始されると、瞬く間に話題を集めました。
衝撃的でしたね。私もすぐさま応援購入しました。
MY ROASTで焙煎しよう
スペックは公式サイトを見ればわかることなのでここでは取り上げず、早速焙煎していきましょう。
今回使用するコーヒー豆はエチオピア/ナチュラル。
皮も果肉も付けたまま天日干しされ、果汁がじっくり染みた豆は糖分を多分に含むためカラメル化しやすく、体感的にもトロピカルフルーツやグレープ(ワイン)のニュアンスは付けやすく感じます。
一方で、特に浅~中煎りのときは、この強い風味が生豆の頃から持っている繊細なベリーのニュアンスを隠してしまわないかに神経を使います。

プロ向け焙煎機では窯をあらかじめ予熱してから生豆を投入する訳ですが、MY ROASTの取扱説明書では加熱前から生豆を入れておくように指示があります。
火傷の防止という観点からもこの指示には従います。

しかし、プロが予熱を必要とするのもまた事実。
予熱なしでダラダラ加熱して水分が飛び過ぎると、生豆の頃から持っていたクロロゲン酸の分解が進まず、瑞々しい甘酸っぱさを生むキナ酸が十分に生成されません。さらにはメイラード反応や、その後に続くカラメル化まで控えめになってしまい、コーヒーの甘みが作られなくなってしまいます。
そこで私は、火にかける前に生豆を入れつつも、予熱しない代わりに、焙煎の最初のフェーズで急激にシリンダーの温度を高める工夫をしています。

具体的には、最初の1分~1分30秒は最大火力で熱するのです。
このMY ROASTは2重構造で、外側のシリンダーがまず熱を持つ訳なので、内側のシリンダーおよび豆に熱が伝わるまでには時間がかかりますが、念のため最初から1.5 rps(2秒に3回転程度のペース)で早めに回します。
ここで回転の速さの単位について補足します。
よく使われるのは「rpm(Revolutions per Minute:1分間あたりの回転数)」ですが……長い! 1分間も回転数を数えて「あ、遅すぎたな」と気付いたときには、もう豆が焦げてしまっています。
という訳でここでは「rps(Revolutions per Second:1秒間あたりの回転数)」で考えます。

開始から1分30秒までには中火に落とします。
そろそろコーヒー豆にも内側のシリンダーから熱が伝わる頃ですね。
開始から4分、そろそろチャフが剥離し始めます。
コーヒー豆にしっかりカロリーを与えていきたいところ。
ここで、ハイペースだった回転を少し緩めてみましょう。1.2 rpsくらい。
開始から6分、チャフの剥離も大詰め。
このままの火力だとあと1分くらいで1ハゼが始まりそうな予感がします。
今回は「トロピカル系」と「ベリー系」のちょうど間を狙いますが、6分でここまで焙煎が進んでいるならば、おそらくトロピカルフルーツのような甘く強い風味は作れるでしょう。
むしろ、繊細なベリーのニュアンスを残すことを考え、ここで弱火にして、1ハゼまでの時間を少しだけ延ばしましょう。

開始から7分30秒頃、パチパチと豆がハゼる音が聞こえてきました。1ハゼです。
ここでとろ火に落とします。
1ハゼ開始から1分(開始から8分30秒)。プロ向け電動焙煎機ならまだしも手回し焙煎機だとこの辺りが最短のラインだと考えています。
ここからさらに、どの程度焙煎を進めるか……。
トロピカルな甘みも欲しいと思うと、もう一歩踏み込みたいところ。
1ハゼ開始から1分10秒……1分20秒。甘い香りもしてきています。
よし、そろそろ煎り止めましょうか。開始から8分50秒です。
さあザルに移して、サーキュレータで冷やしましょう。
ついでにチャフも飛ばしてしまいます。

下記に火力と回す速さを図示しておきます。

ここまでまとめられているなら、モーターで自動化するなり最初からモーター付きの焙煎機を買うなりしたら? と思われるかもしれません。
でも実際は水分量や気温によってこの通りに進まないため、直感で細かく調整してこの図に近付けようと試みます。
仕事として煎るならそれが不都合でも、趣味としてはそれがたまらなく楽しかったりするんです。

MY ROASTでできないこと、困ること
「火傷の恐れがある」とか「手が疲れる」とかそういった当たり前のことはここでは省いて、人によっては購入前の想定と違うなんてことになりかねない点に絞って記述します。
連続焙煎できない
連続焙煎はできません。少なくとも1回目と同じ質で安定して焙煎することはできません。
1回目でシリンダーが熱を持ってしまい、これが発散されるまでに時間を要するからです。
おすすめできませんが無理に連続で焙煎するなら、その時々でシリンダーに残っている熱量に合わせて最初の最大火力を維持する時間を縮めるなどのイレギュラーな対応が必要になります。
冷めるまで清掃できない
冷めてからでないと清掃できません。これもシリンダーが熱を持つことが原因で、冷めてからでないとMY ROAST本体に触れないからです。
焙煎して、冷やして、写真を撮って、密閉容器に入れて……までやっても未だ結構熱いです。かなりの蓄熱性ですね。焙煎の際にはメリットとなる蓄熱性ですが、清掃の際には不都合にもなり得ます。
厳密には厚い純綿の軍手や革手袋があれば絶対に清掃できない訳ではありませんが、決しておすすめできません。

予熱できない
予熱できません。取扱説明書にも空焚きしてはならない旨が記載されています。
そもそも、仮に予熱できる強度であったとしても、生豆が入った計量カップがシリンダーカバーに触れて溶けるのも怖いし、触れさせたくないあまり狙いを外して生豆をこぼすのも嫌だし、火傷なんて最悪です。
嵩張る
嵩張ります。特に横幅が41.4cmと幅広です。
換気扇の近くで焙煎するなら、キッチンにこのサイズを置くスペースを空けることになります。
イメージは湧くでしょうか? 多くの5合炊き炊飯器や食パンを2枚並べられるトースターより幅広で、電子レンジ並みの幅があります。
よく「チャフを散らかすと家族に叱られるのでは」みたいなことを聞きますが、その前に「こんな大きなものどこに置くの?」と叱られかねません。

補足
ここまで特に説明なく書いていた「チャフ」「1ハゼ」などの用語については下記の記事に、
ザルやサーキュレータのような焙煎に必要な器具については下記の記事に書きました。



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